ONLINE COURSE 2【Art theory】
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今回は美術の基礎であるデッサンについて今一度じっくり学んでください。
ZOOMオンラインでは簡単に説明させていただきますので、後程じっくり復習をお願いいたします。
道具に対しての価値観
※wikipediaより
まず、道具に対しての価値観をアップデートしてください。
デッサンを行う為に必要な鉛筆は、様々なメーカーが沢山の種類を販売しています。
美術用鉛筆ではない、いわゆる一般鉛筆でも絵は描けます。
ですが「美術用鉛筆」として差別化されている事に理由があります。
美術用鉛筆は濃度による表現力もそうですが、着力、描きやすさ、消しやすさ、粒子の細かさが違います。
鉛筆の芯は、石墨(黒鉛・グラファイト)と粘土によって作られています。
石墨と粘土をどのように配合精製するのか、様々な種類を試行錯誤し作られています。
国産鉛筆のUNI鉛筆は、特殊な微粒子化技術によって作られ世界で最高のなめらかさを持つただ一つの鉛筆として販売しています。
良く描ける事は当たり前ですが、描きやすさ、折れにくさ、消しやすさなど、美術用鉛筆は他の一般鉛筆とは品質が異なります。
鉛筆の要となる石墨だけが高品質というわけではなく、粘土が与える影響が消し易さや定着に影響しますので共に良く作用されるように作られています。
一般鉛筆と美術用鉛筆は同じようで違うものであるという事を覚えておいてください。
歴史
1560年代、イギリスの北カンパ-ランドのボロ-デール鉱山で良質の黒鉛が発見されました。
なめらかな性質だったので当初は細長く切り、黒鉛そのものを手に持って書いていましたが、手が汚れて使いづらかった為、翌年の1565年に手に持つ部分を紐で巻いたり(A)、木で挟んだり(B)して筆記具として使いました。これが鉛筆の原型と言われています。
また、1565年頃ドイツ系スイス人で博物学者コンラート・ゲスナーは、木や金属でできた丸い筒状の先端に黒鉛の小さな塊を詰めたもの(C)を筆記具として使っていました。
A
B
C ※日本筆記具工業会より
ボロ-デール鉱山の黒鉛を堀りつくすと、やがて、1760年頃にカスパー・ファーバーというドイツ人が黒鉛の粉を硫黄などで固めた芯を作りました。しかし書き心地は良くありませんでした。
1795年になると、ニコラス・ジャック・コンテ(フランス人)が硫黄の代わりに粘土に黒鉛を混ぜ、これを焼き固めて芯を作ることに成功し、さらに混合の比率を変えれば芯の硬度が変化することも発見しました。
現在でもこのコンテの作製方法が基本となり鉛筆の芯は作られています。
1835年、J.S. Staedtlerが鉛筆職人の認定を受けニュルンベルクに工場を設立(ステッドラー社)
1851年、ローター・フォン・ファーバーが鉛筆の長さ・太さ・硬度の基準を作成。六角形デザインの鉛筆を考案。(ファーバーカステル社)
1887年、眞崎鉛筆製造所創業。(三菱鉛筆)
1913年、小川春之助商店創立。(トンボ鉛筆)
黒鉛の特徴と鉛筆規格
特徴
黒鉛・ダイヤモンド・墨・石炭・カーボンブラック等は同素体の炭素からできています。
黒鉛には大きく5つの特徴があり、「潤滑性」「電気伝導性」「熱伝導性」「耐熱性」「耐薬品性」があります。
その特性の中の潤滑性が鉛筆としての機能を果たし、主に鱗片状黒鉛を使います。
規格
JIS規格による様々な規格項目の中で重要な要因が、A曲げ強さ、B濃度、C摩擦係数、D磨耗です。
A曲げ強さは芯の折れ難さであり、B濃度は鉛筆の濃さ、C摩擦係数描画の際の書き味、D摩擦は描画の際の書き減りを表し、鉛筆の規格項目として重要なファクターです。
規格JIS Z 6605 (1951制定→1955廃止) →現在JIS Z 6605
JIS規格(日本産業規格)は日本国内での規格で世界共通ではない。JISでは6B, 5B, 4B, 3B, 2B, B, HB, F, H, 2H, 3H, 4H, 5H, 6H, 7H, 8H, 9Hまでの17種類に関しての規格項目が存在しますが、美術用品として販売されている国内鉛筆では下は10B、上は10Hまで存在します。また重複しますがHI-UNIなどの美術用品は独自の製法で精製された粒子の細かい黒鉛を使用し、JIS規格を超えた最高のパフォーマンスを持っています。
海外製品はこのJIS規格に沿った品質とは違う為、濃度がメーカーによって異なる為注意して使用したい。
硬度
JIS規格によって規定された6B, 5B, 4B, 3B, 2B, B, HB, F, H, 2H, 3H, 4H, 5H, 6H, 7H, 8H, 9Hまでの17種類に加え、三菱UNIは10B, 9B, 8B, 7B, 10Hを販売している。
ステッドラーでは10B〜10Hに加え、11B, 12Bを追加販売している。
BはBlack、FはFirm/Fine(しっかりした/細い)、HはHardを意味している。中間としてして存在したHとBの間の意味を持つHBが初期に存在し、そのまた中間を意味するFが作られた。FとHBは10B〜10Hの中間を意味する。HBの芯は黒鉛約70%粘土約30%で作られている。
デッサン道具
描画材
鉛筆
・STAEDTLER(ステッドラー)マルス ルモグラフ
・faber castell(ファーバーカステル)カステル9000
・三菱UNI Hi-uni
・MONO モノ100
日本の場合JIS規格によって定められた性能で作られていますが、書き心地や消しやすさはメーカーによって違います。特に海外製品と日本の製品では大きく違う部分があるので両方を所有し、違いを理解してください。
また各メーカーの濃度表を作り、色味を理解しておくとデッサンの際に便利です。
コンテ
デッサンやクロッキーで光を描いたり、陰影に色彩を取り入れ表現を豊かにします。ただし、通常の鉛筆のように完全に消すことはできず、うっすらと支持体に残る傾向にあります。
色鉛筆
ユニ アーテレーズカラーは色鉛筆ですが消す事が出来ます。この色鉛筆を使い、コンテのような用途で描く事も可能です。
コンテ
消し具
練り消しゴムは、プラスティック消しゴムと違い、緩やかな消しを可能にし、形を変える事で光を描く事ができます。この練り消しゴムもメーカーによって全く違うので、様々な製品を使って違いを理解してください。
特に人気なのがバルコニーアート イージークリーナーで、粘着力が高いので消す力も強いですが、柔らかいので紙を痛めやすいです。そこで伊研のネリゴムと混ぜ合わせ使う事で硬さや粘着力を調整して使ったりします。
ペンシルタイプのホルダー消しゴム モノゼロは細く細かい光を描く為の必需品です。この細さでプラスティック消しゴムの消す力があるので、様々な部分で使用できます。
イージークリーナー
伊研のネリゴム
ホルダー消しゴム モノゼロ
ぼかし具
・ティッシュ
ティッシュは主に、大きな面で濃淡を均一化させる時に使います。
・さっ筆(2種)
さっ筆は接触する面が小さいので力のコントロールで様々な表情を作れます。さっ筆の力を弱くして使う場合は、硬い鉛筆(H)で描かれた線では、ハッチを残しながらにじませるようにぼかせます。柔らかい鉛筆(B)で描かれた線の場合では、線そのものをぼかしハッチを無くすことが可能です。※さっ筆表現参照
また、さっ筆は紙の目の違いによる表現を変化させます。粗目の紙の目を殺し、中目や細目の紙のような表情を作る事も可能です。
さっ筆には硬いものと柔らかいものがありますが、柔らかいものがコンテやパステル、木炭に使われる方が多いですが、用途は自由です。柔らかいものはぼかす事に長け、硬いものは紙の目を殺したり、硬い鉛筆にも扱えます。
・手指
指でこすったり、手のひらでさすったりしてティッシュとは違う擦れを作ります。
さっ筆表現
さっ筆(紙ー硬い)
さっ筆(柔らかい)
支持体
紙はその都度適切なサイズを使います。デッサンに使うサイズは木炭紙サイズやB2・B3が一般的です。油絵の下書き用デッサンであればキャンバスサイズの紙を使います。
・紙
紙は紙目があり、基本は粗目・中目・細目とあり、目の立ち方によって適した描画材があります。
例えば粗目の紙はコンテやパステルなどに適し、細密なデッサンを行う場合は細目が適しています。
鉛筆デッサン サンフラワーM画A画(中目・白)、TKMポスター紙(中細目・暖白)、ケント紙(極細目・白)
木炭デッサン 木炭紙
・スケッチブック
写生などの屋外でのスケッチを容易にする事と、パネルに紙を水張りするなどの手間や用意を省くことができます。
紙は中目が多く、細目を使用したい場合はケント紙など紙を確認する必要がある。
スケッチブック(参考)
パネル
カルトン
スケッチブック
はかり
・はかり棒
デッサン用はかり棒、またはスポークや、細い園芸支柱、ピアノ線などを使います。
・5円玉+紐
5円玉などの穴の空いた硬貨や重いものに紐を通し、重力による垂直を得てモチーフをはかります。
・デスケル
支持体と正しい比率の4x4マスのグリッドが書かれたデスケルを使いモチーフをはかります。
様々なサイズのキャンバスや紙に合わせて存在しているので注意してください。
紙サイズがF6であればデスケル F6 F6サイズ:318x410mm F0・F50近似比率
紙サイズがF8であればデスケル F8 F8サイズ:380x455mm F20近似比率
紙サイズがF10であればデスケル F10 F10サイズ:455x530mm
紙サイズがF・P・Mであればデッサンスケール F (F列・P列・M列用) ※簡易版
紙サイズがB版であればデッサンスケール B (B列洋紙用)
紙サイズが木炭紙であればデッサンスケール D (木炭紙用)
使われる紙がB2・B3であればデスケルBを。スケッチブックを使われる場合はデスケルF(簡易版)を。
デスケル
その他
・カッター・鉛筆削り
カッター、携帯用鉛筆削りは必需品です。
・芯研器
鉛筆の芯を削る器械です。カッターで整えるとそれなりに大変ですが芯研器を使うと容易に整い、また削った芯をストックできるのでさっ筆につけ使用することもできます。
・羽箒
調子を整えたり、練りゴムや消しゴムのゴミを取り除きます。手でゴミを払いのけると鉛筆がこすれ、思わぬ変化が起こる場合があるので、それを防ぐ為に使用します。
・フィキサチーフ
描画材を支持体に定着をさせる定着液です。
濃い作品やコンテを使うと必ず使用します。
ステッドラー鉛筆削り器
フィキサチーフ
羽箒
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