YOUTUBEで見る様々な想い
美術(芸術)はちょっと変わった学問です。
学問というものは論理的科学的な物事の継承が学問として成り立っている事に対し、芸術は技術を学ぶ事に加え変容していった美意識と価値観の歴史を学び、回答のない感覚的な美しさ、真逆に美しくない物の、もはや形のない物に対してこれが芸術なのだと新しい価値観を与える学問と言えます。
こういう事を伝えると芸術は意味がわからない暇人の道楽のようなものだと揶揄される事も多々ありますが、アーティストは至って真面目に考え表現を模索しています。
今現在のアーティストの周りで起こる美しさ(出来事)とは何のかを考え、感覚的な表現に置き換え模索します。そしてアーティスト個人が見出した価値観を伝えることを目的として活動しています。
昔はそれが記録装置としての機能を持っていましたが写真の登場以降美術というあり方アーティストとしてのあり方を考えなければいけない時代に変化します。写真の登場以降のアーティストは感覚的なマジョリティーの認識を具体化させる表現に変化し、やがてアーティストだけが見出した価値観を提示する学問へと変化していきます。つまり印象派の誕生は写真に対するアーティストのアンサーであり目に見えた世界を描く技術主体の価値観からアーティスト個人が感じ得た認識や美意識を具体化させる概念を表現する美術に変化します。下の紹介動画でもオタキング事、岡田斗司夫さんは写真の登場以降の現代芸術が大嫌いだと語っていますが見方によればそうだと思います。しかし美術史を見ても美術の真は概念や新しい価値観を産むものとなった現代美術から美術の本質が始まったと言わざるを得ません。それは技術に偏りすぎたアルチザンの時代から本当の意味でアーティストとしての時代が始まった証だからです。何度も僕は伝えていますが技術は備えやすく学びやすく時間をかければ誰もが習得でき得るものだと考えています。それはアルチザン(技術者)だからです。アーティストではありません。
それに対し感覚的抽象的な理解や表現を美術史の文脈に沿って、また現在熱を帯びる場を理解しキーとなる人物が起こそうとするムーブメントや様々な物事を理解し、それらをアーティストが感じ得る特徴的な表現に変えしかも論理的に行わなければなりません。高度な思考があってこそ技術の先を表現できるのです。
*アルチザン(技術者)とアーティスト(表現者)との違いをいつか取り上げたいです。
少し脱線しますが例えてみましょう。
伝えたい事の結果をまず書くと「人は進化を求め変化する動物」だという事です。
どんなに望んだ世界であったとしても人はその状況が長ければ慣れていき新たな変化を求めます。科学が発達し生活がより安定するように美術や哲学が新たな価値観を提示し文化を発展させます。大きすぎる変化の後には変化する前の過去の体験を再現する時代もあります。ですが基本的にそれは進化を求めたポジティブなリマインドであり後退ではありませんでした。
進化しよう進化しようと人は全体的にそうインプットされ一生を行動します。
みなさんもそうだと思います。会社で出世するという意欲や仕事内容を合理化させようとか、よりミクロな部分でもより良く進化しようと努力されているのではないでしょうか。
美術(芸術)とは様々な学問がある中で美しさやその価値観を発展させようとする学問だという事です。
学生時代の美術(図画工作)の時間には「絵上手ね」「作るのうまいね」「綺麗な色だね」「独創的だね」という楽しい言葉が飛び交っていたと思います。
みんな楽しみながらまた苦戦しながらも上手く描く事に集中していたと思います。
そんな学生時代にも何と無く理解していた「独創的」という価値観。
「変わった絵だねー」「何このかたちー」と、ときめく物がなかったでしょうか。きっと何か形容し難い捉えにくい感覚の一つとしてそういったきらめきを理解し技術的な美しさと区別も出来ていたと思います。
そして大人になるとこの形容し難い価値観が美術にとって最も大切な意味を持っていくことを知っていきます。
芸術には実技と座学があります。
座学に関しては知識を入れる作業ですので興味ある方は誰でも得ることができます。覚えれば良いんですから。逆に言えば自分が携わろうとしている分野の芸術知識は備えていなければいけません。自分の位置を知る最低限の知識だからです。
しかし芸術の真は実技です。
どのような表現をするのか、アウトプットされた作品が最も大切な結果です。
感覚的主体的な理解や表現は表現者以外にとっては真を感じ得ないものになります。
それ故に鑑賞者は作品の文脈を解いたりアーティストが創るこれからの指標を読み取ろうとします。
だからと言って芸術に必ずしも理由や理屈が必要だとも限りません。
本来美術は視覚的に美しいと感じる事を愛するものです。
革新的で文脈を繋ぐものだけが芸術ではありません。
更に美術(芸術)とは何なのかと掴み所のない感覚になられるかもしれません。
ですが科学や論理で判断できないところが芸術の面白いところではないでしょうか。
「うーんよーわからんけど、この作品むっちゃ好き」
それもまた芸術です。
布施英利さんは東京芸術大学教授で専攻は美術史です。
芸大教授としての知識と綺麗な美術解釈を行われ、一般の方にもわかりやすく美術を伝えています。
面白いところは解剖学を織り交ぜながら独自の解釈をされているところです。
初めて現代美術を知ろうとする方にとても優しく伝えて頂いている番組です。
後編こちら
「大雑多な表現だなと思う子供達のコミュニケーションも、実は物事を関連させた集合的な感覚で大人とは違うスケールで世界観を持っているのかもしれない」とチームラボの猪子寿さんが語ります。
「子供はママを絵に描くと関連する土地や家や木や太陽を描く」個としての表現や理解ではなく対象に関連する物事を境界なく理解し子供は表現すると語ります。確かに何かをつけ加えて描くお子さんいらっしゃいますよね。
ではちょっと実験です。
今からあなたが誰か一人を定め10秒間その人を頭の中でイメージしてください。
10秒測りながら定めた人の事をイメージしてください。
どのようなことをイメージしましたか?
定めてイメージした人はどんな表情でどんな服装でどんな行動(仕草)をしていましたか?モノクロでしたか?カラーでしたでしょうか。またイメージした時は写真のような静止画なのか動画のような連続したものでしたか、シーンが細切れに移り変わる複雑で連続的な映像でしたでしょうか。
人によって様々な結果になると思います。ですがほとんどの方が関連した様々な物事もイメージしていると思いますし動画やシーンではなかったでしょうか。
人は物事を関連づけて記憶をします。
生きているこの世界には時間があり変化し様々な物が関係し合っているからです。
何かを単体として意識した時にその物は単体として存在します。チームラボの猪子寿さんは大人が行う論理的な簡略化が子供の時に行ったスケールとの違いを伝えています。
子供の時は雰囲気やニュアンスといった時間や空間をも覚えていたけど、成長して言語を沢山詰め込むと途端にスマートにイメージを枠組みに収まった言語に置き換えていきます。そして言語の外の世界観は省かれます。
大人と子供に起こる違いを猪子寿さん独特の話し方で作品に繋げていくのが魅力的です。
猪子寿さんの話し方立ち振る舞いを動画越しにも関わらず久しぶりカリスマという言葉を思い出しました。
この動画で一気に猪子寿さんのファンになりました。
後編こちら
さすがの世界の村上隆さんです。
作品を説明するプレゼン力も高く美術をあまり知らない方にも分かりやすい説明してくれています。
村上さんは美術史の文脈を沿った引用をし今に引き継ぐ継承と革新を行う正統派の現代アーティストです。
スーパーフラットを提唱し新しい日本の現代美術を牽引する世界が認めるアーティストです。またプロデュース力が高くデザイン的なブランディングもしっかりされています。特定のブランドとのコラボレートや特定の場所を選び展覧会を開催ししっかりした未来像を持って活動され美術界の解像度が高く自身の道を理解されているアーティストです。
何に価値があり何に価値が無いのかを明確に判断されその基準を新たにご自身が作ろうとされています。
村上さんが作品を説明する中で「これは単なる絵で何でもない価値のないものです」と仰っている龍の絵があります。と言っても村上さんが生み出しているので価値があるのですが、明確にどのような文脈を読み村上隆としてのワードを盛り込んでいるのかを明確に判断し価値があるものないものをキュレターや専門家に問わずご自身でしっかり理解されています。現代美術に携わるというのはそういった指標を自身に中にしっかり持つという事が前提です。学校で学ぶような美術史を知っている事は至極当然当たり前で、それよりも今現在の各国ギャラリーや展覧会の動向や運動を直接体験し学ぶ事が重要で、キーとなる人物や場所で何を村上隆が行うのかを村上さん自身が台風の目になって起こされています。
正統派現代アーティストの言葉の説得力が心に響きます。ただただかっこいいです。
大阪芸術大学キャラクター造形学科で教授もしていたオタキングの名で有名な岡田斗司夫さんの現代アートに対する解釈もまたとても面白いです。
むしろ美術にあまり興味のない方は岡田さんのような解釈になるのかなと思います。
岡田さんは独特な論調で物事の解像度を上げ視聴者にわかりやすく魅力的に語ってくれます。
多分、現代美術に興味のない方は一番ピンとくる解説なのではと思います。
別件ですが今回紹介した動画で何度も出演されている斎藤幸平さん、マルクス派のリベラルで注目されている今とても注目されている方でとても魅力的な本を出版されています。
みなさんの感じ方いかがだったでしょうか。
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