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形骸化する afterimage



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー It erodes, changes, and is ruined. The visible world is an afterimage. 侵食し、変化し、形骸化する。 見える世界は残像。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ​  絵画は何層にも重なった絵の具の表層を見る視覚芸術です。

当たり前ですが何層にも重なった絵は下層になればなる程、見ることが出来なくなります。

ですが上層の絵の具にどのように影響を与えるのかを計算して画家は重色をします。

完成された絵画の見ている部分は、表面に現れた一部分です。

これは前置きです。


今回の作品は、制作から完成までの工程と後の作用に意味を持つコンセプチュアルアートです。


カナタさんが撮影した風景写真をデジタル加工し、元々意図していた意思を朧げにします。

ただし元々の作品の意味を損なわないように「距離」を題材にしています。

近距離、少し手を伸ばせば届く被写体ではなく、遠い距離にある被写体を撮影しています。

距離が物体の色を変化させます。遠くにあればあるほど本来の色ではない距離による物体色の変化が起こります。

この変化を物事には多面性があるという意味として倒置しています。

下地加工した支持体にプリントした写真を元に描き、最後に浸食されたような褪せた錆色を付けます。


物体が変色する「距離」をモチーフにし、更にデジタル加工で形を無くし、最後に侵食された表現をして完成としています。

冒頭の文章は作業を端的に伝えるための詩です。


そしてこの作品は、今回のテーマである「人生」を表しています。


人は生まれて死ぬまでの間に何度も自分の価値観を変化させます。

幼少期は成りたい者になれると信じ、学生時代は夢は叶えられると信じ、大人になれば現実を理解し社会的価値を重視します。

マジョリティーであること、一般的であることを重視し協調し調和する事に励みます。

そうやって価値観を何度も変化させて生きています。

いつからか物心ついた時の思いを心の隅に置いて、大人としての現実を受け入れます。


この作品は最後にフィルムで包み錆を描いています。


展示会の作品と販売ページの作品はこの錆の有無に違いがります。

このフィルムは剥がすことができます。

サイトの作品はこのフィルムが剥がされ侵食されていない状態の作品です。

ほとんどの作品は時間を逆にして戻す事はできませんが、この作品はフィルムを剥がす事で戻ることが出来ます。

侵食されていない時の状態に。

それは今回、希望として存在させたフォームです。


新型コロナで人類は感染の脅威から生き方を変化しなければならず、歴史に残る大きな経験をしています。

錆は放っておけばどんどん進行し原型を壊すまでに侵略します。

この錆は現代のコロナの問題をイメージして追加しています。

もし時間を戻すことが出来ればという希望を形にしています。

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