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感じること




どんな物も永久に存在する事はできません。



子供の頃壊れないと思っていた木のおもちゃは何かの拍子に壊れ、使っていた鉄の道具はいつか壊れます。

銀の指輪も、真鍮の装飾も、そして仲間も家族も、永遠に存在する事はできません。

ずっと思い通りだと思っていた自分の身体も何かの原因で動けなくなったり、老化で低下します。

形あるものは必ず消滅します。


生きている全ての生命に平等に与えられたものが、たったひとつだけ存在します。


それは死です。


どんな生命も必ず死を迎えます。それは生まれると同時に備えもった事実です。

そして運良く今生きている者には、もう一つ与えられているものがります。


時間です。




産まれてから、死ぬまでに運良く消費できる時間を与えられ、様々な事を学び体験して死んでいきます。


成長とは学業だけではなく、社会性や文化を学び複雑な精神活動を行い、様々な価値観を学び人として成長します。

美的感覚や叙情といった、芸術や宗教に関連した高度な精神性は、数値化して測りきれない沢山の物や形を見て、様々な体験をする事によって育まれます。


例えば走る人。


走る人は、速度を感じ、風を感じ、気温を感じ、匂いを感じ、疲れを感じます。

足が地面を蹴る音や、跳躍する事で間近な視界だけが上下に揺れる事、風が耳をかすめ風切り音を出す事、木洩れ陽の光が目を刺激し、雨上がりには湿気った土の匂いが身体をまとい、夏には蒸した草の匂いが鼻をさし、自分が運動をする事で得る様々な体験を得ます。




ひとつの体験から様々な情報を集積し紐付けて叙情を育みます。

感受性を高くし情報を得る事は誰にだって可能です。

気付いていないのではなく、見ていなかった、関心のなかった当たり前の中にも、美しい世界が存在します。

わかりやすい物事だけではなく、繊細な毎日の中にも沢山の美しさが存在しています。

成長とは新しく物事を理解するだけではなく、現存した環境の中にも価値を見出せる柔軟な思考と感覚を養える価値観の多様化もさします。

成長とは様々な概念を理解し結びつけ応用して思考できる、思考の広さをさすのではないでしょうか。

当たり前だった世界の中に価値を見出せれば欲求の方向も変化すると思います。


何のために生まれたのでしょうか。

何のために時間があるのでしょうか。

何のために死んで行くのでしょうか。


感じて学んで、体験して人生を楽しんで、良い経験をする為のアプローチを後世に残せる事ができれば、少しだけ他人に役立てるのではないかと思っています。


こんな美しい世界に生きています。





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